ホームインスペクターの第三者性…。

少し前の事ですが(11/17)、公認ホームインスペクター(住宅診断士)資格試験を受験してきました。

公認ホームインスペクター(住宅診断士)とは、住宅全体の劣化状況や欠陥の有無を目視でチェックし、メンテナンスすべき箇所やその時期、おおよその費用などを「中立な立場」でアドバイスする専門家(NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会 のHPより)。2009年に第1回目の試験が実施され、今年2013年で5回目の民間資格です。

試験などの詳細はこちらを。 → リンク: NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会

By: E. Dronkert

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前々から気になっていたこの資格。

業界経験もない上に建築知識などもまったくない私としては、建物のコンディションを把握するための知識のとっかかりになるようなものが何かしら欲しいと思っており、そういう意味ではこの資格の勉強はプラスになるのかなあ、などと思っておりました。

こういう知識は机上ではなく現場を知らないと身に付かないだろうとは思うものの、何も知らないよりは良いだろうという感じ。

しかし、そんな動機も忘れたまま試験日を迎えました。お客さんからのアポ入れしている時に、「あれ、なんでここ日曜休みにしてたっけ?」と気づいた次第(苦笑)。それでもお客さんとの約束は試験終了後にしてもらって、試験は受けてきました。受験料12,000円払いましたからね。

 

 

この試験、「建築」「調査・診断」「不動産取引・流通」「倫理」の4分野から出題され、総得点だけじゃなく、各分野別の基準点を上回らないと合格になりません。建築などの知識が乏しい私にとっては、建築分野が難敵です。

そんな訳で、私が合格しているかどうかはさておき、「一夜漬け」でテキストを読みながら、ちょっとモヤモヤしちゃったことがあったので記事にします。

 

ホームインスペクターは中立でなければならない。

それは、ホームインスペクターの中立性、第三者性。

ホームインスペクションって、主に住宅購入検討者が対象物件のコンディションを把握して、購入の是非や価格、リフォーム費用の目算などを立てる為に利用されるものなので(売主が利用する場合もありますが)、物件取引の当事者や仲介業者からの中立性・第三者性が必要。

日本ホームインスペクターズ協会の 「ホームインスペクター倫理行動規定」 にも次のような規定があります。

【第3条 (中立性の堅持)】

  1. ホームインスペクターは、業務を行うにあたって、中立性の堅持に務め、客観性、信義誠実を旨とし、公正な立場から行動、発言しなければなりません。
  2. ホームインスペクターは、顧客先が一般消費者、不動産会社、工務店、設計者等のいずれであっても第三者性を堅持し、特定者が優位になる検査報告はしてはなりません。
  3. ホームインスペクターは、事実と相違する報告書を作成してはなりません。
  4. ホームインスペクターは、不動産売買の意思決定に関して、顧客を誘導してはなりません。
  5. ホームインスペクターは、何らかの理由により第三者の立場でないホームインスペクションを行う場合には、その旨を依頼者に対して、書面によって説明を行い、依頼者から記名・押印した書類を受領しなければなりません。
  6. ホームインスペクターは、常に社会から信頼される存在として、透明性を高め、公正かつ健全に行動しなければなりません。
  7.  ホームインスペクターは、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはなりません。
  8.  ホームインスペクターは、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはなりません。

NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会 「ホームインスペクター倫理行動規定」 より抜粋
* 全文掲載ページへのリンク :  ホームインスペクター倫理行動規定

 

いくら「中立にやっていますよ」と心がけを説いたところで、例えば、売主業者が行ったインスペクションが中立であるかどうかには疑義を感じざるを得ないだろうし、いわば「第三者性」は中立性を支えるために必要なもの。だからこそ、上の 5. で、「何らかの理由により第三者の立場でないホームインスペクションを行う場合」の説明義務などを課している訳ですよね。

 

ホームインスペクターの第三者性とは。

問題はその「第三者」とは何かということ。

取引主体として第三者であるかどうかではなく、中立を維持できるような「第三者性」が求められている訳だから、単に法人格が別である、別法人であるというだけでは足りない訳ですよね。例えば、既存の不動産仲介会社が別法人でホームインスペクション会社を設立したり、その逆だったりしても、形式的に第三者だというだけで、中立性を維持できる「第三者性」があるとは言えない。

このあたりの事を、もう少し突っ込んで表現しているのが、国土交通省がとりまとめた 「既存住宅インスペクション・ガイドライン」。

●客観性・中立性の確保

  • 客観的、誠実に取り組み、公正なインスペクション業務の実施に努めること。
  • 検査結果の報告に当たっては客観的な報告に努め、事実と相違する内容の報告を行わないこと。また、リフォーム工事費の目安等に関する情報を提供する場合には、検査結果の報告書とは別であることを明らかにすること。
  • 宅地建物取引業又は建設業若しくはリフォーム業を営んでいる場合は、その旨を明らかにすること。
  • インスペクション業務を受託しようとする住宅において、媒介業務やリフォーム工事を受託している又は受託しようとしている場合は、依頼主に対してその旨を明らかにすること。
  • 対象住宅の売主、媒介する宅地建物取引業者又はリフォーム工事を請け負う建設業者等との資本関係がある場合は、依頼主に対してその旨を明らかにすること。 
  • 自らが売主となる住宅についてはインスペクション業務を実施しないこと。
  • 複数の者から同時に同一の住宅についてインスペクション業務を受託する場合には依頼主の承諾を得ることとし、依頼主の承諾なく依頼主以外の者からインスペクション業務に係る報酬を受け取らないこと。
  • 住宅の流通、リフォーム等に関わる事業者から、インスペクション業務の実施に関し、謝礼等の金銭的利益の提供や中立性を損なうおそれのある便宜的供与を受けないこと。
  • インスペクション業務の実施に関し、依頼主の紹介や依頼主への推薦等を受けたことに対する謝礼等を提供しないこと。
  • 住宅の売買契約やリフォーム工事の請負契約を締結しない旨の意思を表示した者に対して、これらの契約の締結について勧誘しないこと。

国土交通省 平成25年6月 「既存住宅インスペクション・ガイドライン」 より抜粋
* 下線はブログ管理人による。
* 全文掲載ページへのリンク :
報道発表資料:「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の策定について – 国土交通省 

 

インスペクション会社と売主、宅建業者、リフォーム業者等との間に資本関係がある場合は、依頼主にそれを明らかにすべきとしています(下線部分)。形式的に法人格が別なだけじゃ「中立」とは言えないよ、ということですね。「ホームインスペクター倫理行動規定」の言葉で言えば、「第三者性」に欠けるということですね。

 

ホームインスペクション付仲介

さて、これに関連して、とりあえず仕事に引きつけてみて気になるのは「ホームインスペクション付仲介」サービスを行っているタイプ。

不動産仲介会社が買主(場合により売主)へのサービスとしてホームインスペクションを行うというもの。インスペクション費用分を仲介手数料から割り引いたりします。

タイプとしては、仲介会社がインスペクション部門を、インスペクション会社が仲介部門を持っているタイプが一つ。

仲介会社がインスペクション会社を、逆にインスペクション会社が仲介会社を別法人として設立しているタイプが一つ。

もちろん、独立系(?)ホームインスペクション会社もあるようなので、そういう会社に委託するというパターンもあると思います。

同会社の別部門や関連会社だったりする場合、通常その関係性は公表されているように思います(全てがそうかはわかりませんが、目立っている会社はそう)。また依頼者に個別に書面で説明をするなどしているのだと思います。であれば、倫理規定やガイドラインにそっています。

そういったことを前提に利用するかどうかを選択するのは消費者、ということですね。

 

まあ、入口での関係性の表示の程度にはかなりばらつきもあるし、客観的に中立性が確保できる関係性なのか、という観点だけで考えると、やはりなんとなく微妙な気持ちにはなりますけども。

しかし、資本関係も何もないホームインスペクション会社と仲介会社の間であっても、マージンが動いている可能性はある訳で、それは外部からは容易にわからないですね。そうい意味では、ある程度の関係性があっても、それが公開されている事の方が安心な場合もあるかも知れません。

 

そもそも、ほんの10数年前までは、ホームインスペクションなんて言葉を聞くことは少なかったです。今でも定着しているとは言えない中、安定したサービスを提供できる業者は限られているでしょう。インスペクション会社と仲介会社等の間に何らかの関係性があるということは、現状では致し方ないことのようにも思えます。

儲けるために「第三者性」を偽ったり、「中立」を装ったりするとすれば、それはホームインスペクションの存在意義自体を失わせるもの、消費者を欺く行為だと思いますが、ホームインスペクションというものを商売に利用すること自体はある意味当然だとも思います。

それに、蓄積があって、ホームインスペクションへの信頼性を勝ち取っている会社であれば、仲介との利害関係があってもお客は問題にしないかも知れませんね(どうだろ?)。

現状、公的な制度でも何でもないのだから、その信頼性、「第三者性」や「中立性」のレベルについても消費者が賢く判断するしかないのかも知れませんし。

この先ずっとそんな状態で良いはずはないですが…。

 

完全に近い形で第三者性が確保されているに越した事はないでしょうが、その為にはこの市場がもっと大きくならないと難しいのかも知れません。そもそも、インスペクションが行われる事の方が圧倒的に珍しいのが現状ですものね。

この民間資格自体も創設されて間もないし、他にも「既存住宅インスペクター・アドバイザー」( リンク: 一般社団法人 既存住宅インスペクター教育研究会 のHP)というものも出来たりして、この分野について固まっていくにはまだまだ時間がかかるのかな、とも思います。

違う角度からは、既存住宅瑕疵保険等も始まって間もないし、大手仲介が瑕疵担保責任を保証するサービスなんかも色々出てきていますものね。

 

 

と、中途半端な書き方をしつつ、本当はなかなかに微妙な気持ちでいっぱいなので、何を言いたかったのかわかりにくくなっちゃいましたね。すみません。もう生意気書くのはこれくらいにして、続きはそのうちということにしようと思います。

 

 

———————————

もちろん、インスペクションの事なども自分の商売に関わることとしてグダグダ考えてる訳ですが、万一、公認ホームインスペクター資格が取れたとしても、現場経験がない自分がインスペクション業務を行うことは不可能です。それに、ホームインスペクションを取り入れるとすれば外部に委託することになるでしょうし、第三者性の観点でもそれが適正だと思います。

ですので、自分自身が資格を取るモチベーションがあまり上がらなかったのですが (この言い訳を長々書いていたみたいになってますね…)、商売抜きにしても、個人的に新築より中古の流通が増えるといいなと考えている私としては、いわゆるホームインスペクション以外の住宅診断・調査・審査等の事なども含め、もっと色々突っ込んで勉強しなけりゃな、と思っているところです。

 

———————————

最近何だか忙しいです。更新も少なくすみません。

忙しいのは良いことではあるのですが 「労多くして益少なし」 とはこの事か、と思うことも多くちょっと疲れ気味。

温泉にでも行きたい気分ですが、公園の紅葉を車から見るぐらいで我慢です。

 

 

 

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griffin

グリフィンです。不動産業もWordPressも関わるようになってまだわずか。それを差し引いてお読みください。コメントはお気軽にどうぞ。

6件のコメントが “ホームインスペクターの第三者性…。” にあります

  1. グリフィンさん、こんにちは。
    中古住宅の仲介の際に、ホームインスペクション付きをウリにできたらと思っています。
    自分ではできないので外部に委託することになると思いますが、信頼できる委託先(技術力、第三者性)を確保することは結構難しいような気がしています。
    そしてさらに、当該中古住宅のプラスアルファの魅力を買い希望者に感じてもらえるような情報提供が必要なんでしょうね。

    1. ラストショーさん、こんにちは。
      技術力はともかく、第三者性についてはあまり厳密でない実態がある気がします。
      ホームインスペクション実施事業者も千差万別なのが実態ですが、しっかりやっている独立系の会社も探せばあるように思います。
      しばらくしたら、そういったいくつかの会社に挨拶まわりに行って話を聞いてみたいとも思っています。
      こちらが紹介するのではなく、お客さんが自由に選ぶのが一番だとは思うのですけれど。

  2. 日本では安全が当たり前となっているため、安い料金の高速バスに乗る際に安全性を考えないのが普通です。それと同じで、(特に個人間では)住宅の売買の際に瑕疵担保責任を負わないという条項が付いているのにもかかわらず、あまりチェックをせずに購入している人が多いんですよね。

    安全をお金で買うという風潮が高まってきた時に(それは同時に日本人の間にある信頼性が失われたことをも意味しますが)、住宅診断が法律で規定されることになりそうです。

    1. 時代背景、政策などに支えられて、日本の住宅市場は極端な新築偏重で進んできたため、一般消費者が中古建物の品質に関心が向くことが少なかったのかも知れませんね。

      個人的には、建てては壊し壊しては建てる、という流れはもはや社会的負荷が大きすぎる気がします。法律で義務づけるかは別にして、中古流通に住宅診断が当たり前のように組み込まれることは流通活性化に資すると思います。

      大手仲介が自ら瑕疵保証を行う流れも出てきていますし、どう中古の安心を消費者に感じてもらうかはこれからまだ色々揉まれて行くのだと思いますが、「安心して中古住宅を買える」というムードが高まって行くといいなと思います。

  3. お忙しい中、試験の準備と受験、さらにブログ更新と、お疲れ様です。

    公認ホームインスペクターという資格は初めて知りました。たしかに第三者という視点がないと、お客様からみた利用価値が低くなるように思います。A社とB社でお互いに第三者という立場から依頼するとしても、チェックが甘くなりそうですし、かといって、これを専業にするのも厳しそうなので、なかなか普及しにくそうな感じではありますね。

    1. 資格自体は創設されて間もないですものね。

      ホームインスペクション自体は10年以上前に知ったのですが、その頃に比べればかなり認知度は上がっていると思います。

      スタンダードが決まるにはまだまだ色々ありそうですが、中古流通のプロセスに住宅診断が当たり前のように組み込まれるようになるのではないか、またなるべきじゃないか、と個人的には思います。

      その為にも第三者性は厳密であるべきだと思いますが、実際にはそう簡単な話でも無さそうな気がしてきたのが記事を書いた動機です。

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