起業・独立したら、「想い」よりも「日々具体的にやること」自体の方が支えになるのかも、と思う。

このブログのコメントやメールを通じて交流させて頂いている方の中には、私と同じように未経験で不動産業を開業された方や、開業を検討されている方、不動産業界の先輩の方、他の業界で起業された方、起業を検討されている方など、色々おられます。私にとってとても嬉しくありがたいことです。

Chisel © by John Loo

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そんな中、時々、起業すべきかどうか思案中、あるいは悩んでいるというメールを頂くことがあります。

私自身、仕事が軌道に乗って順風満帆です、なんて胸をはって言える状況ではないですし、そもそも単なる悩めるオッサン、ヨチヨチしているオッサンです。独立開業したわけですが、「起業」などというカッコ良さげな言葉にあてはまる気はしません。

色々な事情があったのは確かですが、サラリーマンを辞めて約2年半も経ち、その間かなりの紆余曲折を経て、現在駆け出しの不動産会社を一人でやっている訳です。

そんな私なので、何かアドバイスをする資格がある気はしないのですが、それでもせっかくなので、少しでも参考になればと、今の自分の思うことはお伝えするようにしています。

それで、最近やりとりしていて、つたない経験・反省から言えばこういうことじゃないかなあ、と思うことがあるので書いてみます。

1.  「具体的に」何をしたいか。

会社を辞め、独立するにあたって一番大切なことは、「具体的に何をやりたいか」だと思います。

そんなこと当たり前だと言われそうですが、「どんな仕事をしていきたいか」「どんな価値を産みたいか」などの抽象的なことから、その手段として起業するなんていう思考も多々あるように思われます。あまり読み聞きしないので良くはわかりませんが、偉い起業家さん達の話にも時々出てくるような…。まあ、多分に「ストーリー」なんでしょうけど。

でも、抽象的なことより、まさに「具体的に」何をしたいのかは一番大事な気がします。

「○○というサービスを世に出して□□という価値を産みたい!」と言う時、「○○というサービスを世に出したい!」に比重があるのか「□□という価値を産みたい!」に比重があるのか、という問題です。

後者の方が立派な感じがしなくもないし、わりとそれが大事だと言われることも多い気がします。でも、実際には前者の方が一心不乱にやり抜く力は強い気がします。

これは、「○○という仕事をして□□というやりがいを感じたい!」と思う場合も同じで、□□より○○に大きな比重がある人の方が強いと思います。

どんな価値を産みたいか、どんな仕事をして行きたいのかはとても大事だと思います。私自身も仕事で何か選択を迫られた時、そこに戻って考えます。サラリーマン時代もそうでしたし、今もそうです。

それを「理念」とか「信念」とか呼ぶ場合もありますが、私はそれほど大げさな言葉が当てはまるとは思っていません。

今日言いたいことからは外れるので簡単に言うと、対価を払ってくれる人がいるから仕事は成り立つ訳で、対価を払ってくれる人との関係で自分はいったい何者なのか、という問題です。もっと単純に言えば、何に対してお金を頂いているのか、それに見合う仕事をしていると言えるのか、という問いかけです。

「理念」「信念」というほどカッコいいものではないけれど、とても大事なことだとは思っています。

2. 起業・独立したら日々取り組むべき具体的な仕事が支えになる。

話を戻すと、やりたい「何か」をサラリーマンは自由に選ぶことはできません。会社が自分のものでない以上、そこには多かれ少なかれ制限があります。入社する時にその「何か」を選んでいるつもりでも、入社後はある枠の中で仕事をすることになるでしょう。比較的大きな裁量が与えられていても、やりたい「何か」について完全にフリーハンドではありません。

思い返すと、サラリーマン時代、私を支えていたのは 「こんな価値を産みたい」「こんな風に仕事をしていきたい」「こういうことにやりがいを得たい」といった抽象的な事だったようにも思えます。やるべき「何か」は、(幅はありますが)選択の余地なく目の前にあり、それにどう取り組むかという「姿勢」やら「想い」のようなものが、色々なバリエーションで個々人の中にある、という感じでしょうか。

しかし、独立する時、また独立してからは、具体的にやるべき「何か」は自分で自由に選べます。

その時、「産みたい価値」「感じたいやりがい」「想い」が先にあって、そのための「手段」を選択するという順番よりも、「とにかくこれをやりたい」という具体的な何かがある方が圧倒的に強い気がするのです。

例えば、「日々の苦しみの中にいる人々を癒し、ひいては国家安寧に尽くしたい、そのために素晴らしい仏像を彫るぞ。」と思う仏師より、「とにかく仏像彫りてえ。彫って彫って彫りまくりてえ。」みたいな仏師の方が、すごい仏像を彫れるような気がしますし、修業の進むスピードも速い気がします。

変な例えだったのでもうひとつ例えると、「地域の老若男女が気軽に立ち寄ってコミュニティー再生に寄与できるようなカフェレストランを作りたい。」と思うよりも、「俺の作るこの料理は無茶苦茶美味しくて安く作れるから、みんなに食わせたい。」というところからスタートする方が、うまくいく気がします。もちろん、前者でもお店のコンセプトやメニューやらが具体的に決まり、それ自体に強く思い入れることが出来るのなら問題ないのかも知れませんが。

実際の頭の中、思考パターンというのは前者・後者がまぜこぜになっているのでしょう。

ちなみに、実は私自身はどちらかというと前者の傾向が強いです。サラリーマン時代は、「俺はこういう仕事がしたい」「こういう価値を産みたい」なんて想いが鼻息を荒くし、一心不乱に仕事する、みたいな感じでした。それでも、会社を辞めるという選択を除けば、一定の枠付けの中でやるべき「何か」選ぶ余地なく常に前提としてあった訳です。

でも、起業・独立するなら、やるべき具体的な「何か」は本当に自由に選べます。逆に言えば、その「何か」が曖昧になると何もないのと同じになってしまいます。とにかく具体的な「何か」をある程度以上のスピード、一定レベル以上で遂行して結果を出さないとたちまちヤバくなります(もちろん、サラリーマンもそうですが、ヤバさが違います)。何を考えていようと、具体的な「何か」をやり尽くさないと、いくら想いが強くてもそれは無意味です。

仕事の本体(?)となるのは、抽象的なものではなく、具体的な商品・サービスなんですものね。馬鹿みたいに当たり前のことですけど。

だから、会社を離れ一人になった時、自分を支えるのは、一心不乱に取り組める「具体的な何か」なのだと思います。「やりたい」と思い自分で選択した、「日々具体的に取り組むべき何か」。心理的な意味で言っているのですが、売上・利益など具体的な結果についても言えることです。

もっと言えば、独立して一人になれば不安になることも多いですが、具体的にやることがある、というのはとてもありがたいことなんです。こんなことは私程度のレベルだからそう思うのかも知れませんが。

3. だってやりたいんだもん。

私は独立後、仕事以外で想いもよらない事情の変更が複数あり、この「何か」を見直さなければならなくなりました。その時が一番きつかったです。

それでも変わらぬ「想い」があり、それはずっと続いていて、今も自分の仕事のあり方を支えています。ただ、具体的なものが一旦見えなくなってしまった時は、途端に苦しくなりました。

不動産の仕事、またその中でも何をやりたいのか、それがはっきりしてからは、楽とは言わないまでも、すっきりしています。

ここがはっきりしていれば、開業前ほとんどの先輩業者さんに 「なんで一人なのに賃貸なんかやるの?」なんて言われても、「だってやりたいんだもん。」という理由でしこしこと準備をし、あたふたと走りまわりながらもやる訳です。もちろん商売として、稚拙ながら自分なりの計算もあり、その辺は開業してみて初めてわかったこと(ネガティブな要素も含め)も多々あるのですが、賃貸をやり続けること自体には迷いはないんです。

生意気ながら、どんな仲介サービスを提供したいか、とかそいういう想いはあるのですが、でもたぶん「賃貸好きだな、やりたいな、楽しいな」みたいな気持ちの方が支えになっているのかな、と思います。

人間とは弱いもので、抽象的なものよりも、具体的なものの方が実際には支えになる事が多いのが実際なのかな、と思います。

4. 会社退職前はバイアスがかかっているかも。

ところで、会社に強い不満があったり、そこまででないにせよ「このまま会社にいていいのかな」なんて思っていたりすると、「本当はこんな風に仕事がしたいんだ」「こんな価値を産みたいんだ」という想いで独立を考える方も多いと思います。私にもそれはありましたし、おかしいことだとは思いません。むしろ大切だと思います。

ただ、どこかに既に「辞めたい」という想いがあると、一定のバイアスがかかって抽象的な想いばかりが先行し、それに伴って具体的な「何か」を無理矢理選び出す、ということもあり得るかも知れません。そうすると、いざ独立してみてからやるべき事を見失い、あるいは「あくまで手段だから」とやり切ることなくフラフラと手段を変える、ということになってしまうかも知れません。

それでも、「俺は精神的にものすごく強い」なんて人なら何とかなるかも知れません(自分で思っているだけではダメですけど)。あるいは、「バカヤロー、この!俺がやるんだからいいんだよ。見てろやボケ!」(下品で失礼)みたいな根拠のない自信(というか虚勢を張りつづける意地)みたいなのも意外と大きいとは思うのですけどね(実は私このタイプかも知れません)。

でもやっぱり、一心不乱に取り組む「具体的な何か」があるべきだと思います。それが最低要件だという気すらします。「想い」とか「価値」優先型だと、とてもしんどいことがあるかも知れません。

5. ビジネスとして成立するかはまた別。

ぐじゃぐじゃ書きましたけど、ビジネスとして利益を出して続けられるかどうか、という問題には触れていません。当たり前ですが、具体的にやりたいことがはっきりあって一心不乱にやれば必ずうまくいく、という話ではなく、あくまで気持ちというか思考パターンの問題。ただ、いきなりスタートダッシュからばんばん利益でますわー、みたいな人ばかりではないと思うので、意外とこういうことって大事なことなんじゃないかな、と思って書きました。

ちなみに、全然別の角度の話であありますが、「とにかく金を稼ぎたい」という強い想いでがんばる、みたいなのもあるでしょうね。そういう感じについて、私はますます言及する資格もない気がしますので触れないでおきます。

気づけば 「好きなことを仕事にすれば頑張れる」みたいな、ティーンネージャー向けのありがちなアドバイスみたいにも読めますね。それに「気がする」的な部分が多いですね。正直「気がする」レベルなのでそれくらいのものとしてお読みください。

こういうことを書いて読み返すと、わかりきったことをグダグダ書いている気がしてお蔵入りさせたくなるんですが、「頭でっかちにならず、具体的に動き続けることが大事だよ」とか、「一人でやってるんだから、とにかくやりたいことをやろう」という自分自身への呼びかけでもあるので、このままアップすることにします。

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griffin

グリフィンです。不動産業もWordPressも関わるようになってまだわずか。それを差し引いてお読みください。コメントはお気軽にどうぞ。

6 thoughts to “起業・独立したら、「想い」よりも「日々具体的にやること」自体の方が支えになるのかも、と思う。”

  1. 初めまして、一応mjと名乗らせて頂きます。

    私も近い将来、起業を考えています。と言うよりしなくてはいけない状況です。
    私は現在34歳なのですが、とにかく小さい頃から勉強などせず遊んでばかりで・・・ようは「バカ息子」なのですが、26歳の時に腰のけがで30歳中ごろ過ぎまでリハビリ生活をし、初めの8カ月は寝たきりでした。

    そんな頭の悪い私が31を迎える頃に、社会人に復帰しても就職も出来ず、社会人に復帰しても初めは3時間程度しか動けず、リハビリ感覚で父の仕事である不動産業を手伝う事になったのですが、この業界で30年以上やっているベテランでバブルのおかげなのか借金もあります。
    そして地元の銀行から「上から整理しないかなど聞いてこい」と言われたそうです。
    まあ、一度は見直しをし、再契約の条件で毎月支払っていますがどう言う訳か他の要件がメインの話だったのに急にそんな話になってしまい。父も私も今、胸がはちきれそうです。

    私は腰の都合もあり、機動力がありません。
    しかもこの業界の人脈もなければ顧客名簿も賃貸管理物件もほとんどありません。
    個人的な貯金も30万くらいです。ここ数年この様な状況に私の心は壊れそうです。

    今の私にはその「具体的な何か」はまだありません。「こんなお店にしたい」と言うのはありますが、到底お金がありません。
    家庭がこんな状況なので。と逃げの文句を先に言っておきますが、いつ家が取られるのではないかとビクビクしながら仕事をしています。おかげで勉強に身が入りません、宅建も身が入らないまま数年前に取得しました。弱い人間で、馬鹿な息子で、根性もなく、甘えん坊なダメ男なんです、分かっているんです。
    私さえいなければ両親は楽になれるんです。だけど自ら命を捨てる勇気もないんです。昔からの友達や家族がいるから。

    私は未経験者と同じなんです。でも、もうこの年になると腰の事もあるし、転職は出来ません、これしかないんです。

    けどグリフィンさんのこのブログを見て少し元気をもらいました。少しだけど勇気も貰いました。
    どのようにして起業しようか、準備をしなければいけない覚悟、本気にならないと行けない決心、そして「具体的な何か」を探そうと思います。このまま全てを取られて公園で一人栄養不足で死ぬなんて御免です。

    たまたま見つけたこのブログとても楽しいし勉強になります。
    私も先々、グリフィンさんみたくなれるように頑張ります。

    1. mjさん、こんにちは。

      私は見習って頂くような人間ではありません。私自身が毎日毎日不安の連続です。なかなか眠れない日もあります。悔いもたくさんありますが、それよりもやはりこれから先についての不安がいっぱいです。

      「元気があるのは空元気」と良く思います(私が勝手に作った言葉です)。空元気だと自分でわかっていてもそうするしかないのです。不安が襲ってきても潰されてしまたらおしまいです。

      偉そうなことは全く言えません。ただ、生きていく意思、それだけです。何のために頑張るのか、どう頑張るかは人それぞれだと思います。置かれている環境、与えられた条件も人それぞれです。しかし、どんなことをしても生きていく意思、それが自分を支えるのだと思っています。

      私は人に頼るのも、心の中をさらけ出すのも、下手です。というか出来ません。頼りは自分自身だけです(もちろん誰かが助けてくれていることもあるのでしょうが)。そして自分自身とは意思そのものです。

      ちょっと生意気なことを書いたかも知れません。すみません。ただ、私のような者が書いた文章を読んで、何か少しでもプラスになることがあるとすれば、それはとても嬉しいです。

      頑張りましょう。

  2. はじめまして、グリフィン様。
    『起業 不動産 ブログ』で検索してグリフィン様のブログがトップに表示されました。
    今日、実は会社で同じ検索をした時のアメーバーブログの別の方のブログの続きを読もうとアクセスしたのですが
    なぜか出てこないで、家のPCですとグリフィン様のブログが筆頭に出てきたのです。きっとグリフィン様の方を参考にさせていただきなさい、という天のお告げ?ではないかと。ブログ立ち上げてくださいましてありがとうございます。

    1. anさんはじめまして。

      アメブロの方のブログ、参考になりますよ。このブログでもサイドバーからリンクはってますし、私も一時期目を皿のようにして読みました。是非そちらもお読みになってください。私の方の情報だけでは不十分ですし、偏りもあります。

      他の情報も合わせて、色々いいとこどりしてお読みになるのが一番だと思いますよ。

      でも、お読みいただけて嬉しいです。
      ありがとうございます。

  3. グリフィンさんへ

    いつも楽しく拝見させて頂いております。
    未経験不動産業起業予備軍のたにです。^^

    グリフィンさんの言う、
    「好きなことを仕事にすれば頑張れる」
    これに尽きると思います。

    「具体的に何がしたいか」=「好きなこと」
    「ビジネスとして成功するか」=「頑張れる」
    だと僕は理解してます。

    ただがむしゃらに頑張るだけではビジネスとして成功するとは思いませんが、好きなことだからこそ成功させるための策をあれこれ考え頑張るのだと思います。

    起業に関する書籍やネット記事には事業計画を立てて・・・と書いてありますが、P→D→C→A
    を回すとゆう考え方なのでしょうが、完璧な計画ほど実行に移せない気がします。

    Pをしっかり考える事は悪いことではないと思います。ただ、事務方の仕事の仕方だと思いますし、自分も会社勤めの時はそうしてきました。

    起業は現場的な仕事の仕方が良いのではないかと思っています。
    まず行動することが大事かと・・・
    行動しないと結果は出ませんし。

    楽観的すぎですが、そこが自分の強みであると思っています。

    「仕事は創作だ ハッタリと空想と実行から生まれる。」

    僕はこれを座右の銘にしています^^

    サラリーマン金太郎の言葉ですが^^

    よくわからないコメントになってしまいましたが、これからも頑張ってください!!

    1. たにさん、こんにちは。

      コメントを頂いたのをきっかけに、この記事を改めて読んでみて、やっぱそうかな、と思います(反省をこめて)。

      おそらくその人の性格にも左右されるのでしょうね。
      綿密な計画をたてて、実行してみて修正していく、そういうやり方の方がしっくりくる人もいれば、「とにかく行動」ということで、行動から新たに何かが生み出される人もいるでしょう。きっとそのどちらも必要なのでしょうけどね。

      大事なのは、「自分らしく仕事すること」のように私は思います。頼れるのは自分だけなので、自分自身を目一杯活かすことが大事なのかな、なんて思います。

      コメントありがとうございます。
      たにさんも頑張ってください。
      これからもよろしくお願いします。

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