不動産流通経営協会(FRK)がヤフーへの不動産情報提供停止、他も追随すれば?

ヤフーがソニー不動産と提携して始めるという「不動産流通革命プロジェクト」。その中心となるのは、「不動産売買プラットフォーム」における不動産の “個人間売買” 。そしてその実質は、ポータルによる不動産売買仲介への参入だと私は思っています。これに関連して、不動産流通経営協会(FRK)がヤフーへの物件情報提供の取りやめを決めたという知らせが入ってきました。

By: Thomas

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1. ヤフーとソニー不動産の提携は実質的にポータルの不動産売買仲介への参入。

ヤフーとソニー不動産の提携に関しては過去記事に書きました。

過去記事(2015年7月9日) : ヤフーとソニー不動産の「不動産流通革命プロジェクト」は本当に革命なのか。

ポータルとしての集客力を活かして、最初は他の不動産ポータルサイトからの連動掲載なども使いながら物件掲載数を増やし、さらに定額で低額の掲載料でさらに売買物件を集めまくり、その上で満を持して仲介に参入する、そういう絵が最初から描かれていた可能性は否定できません。さすが生き馬の目を抜くIT業界の雄ですね。

ヤフーが不動産情報に関してもポータルの地位を築くことが出来たのは、直接または間接(不動産ポータルや不動産業務支援システムからの連動掲載など)に、様々な不動産業者から情報が寄せられていたからですが、そのポータルパワーを自社とソニー不動産のためだけに使おうとしていると疑念を持たれても仕方ない状況にあります。ソニー不動産が仲介手数料を取るモデルであり、”個人間売買”という言葉とは違って、自分たちで売却の媒介をゴッソリ取るための仕掛けに過ぎないとも見えるからです。

新しいサービスについて一般ユーザーに告知する際、美辞麗句が並ぶのは普通のことではありますが、「革命」などの大仰な言葉が並ぶわりにそのセコい動機が垣間見える点は仕方ないとしても、ヤフー不動産を不動産ポータルたらしめてきたソニー不動産以外の業者に対する配慮が無さ過ぎる、仁義のかけらもないと考える向きもあるだろうと思います。

 

2. FRKがヤフーへの不動産情報提供停止を決定。

そんな中、不動産流通経営協会(FRK)がヤフーへの不動産情報の提供をとりやめることを決定したそうです。

ヤフーへ不動産情報提供しません 業界が取りやめ決定、ソニー不動産との提携に反発 – 産経ニュース

FRKの田家邦孝参事は「ヤフーは大きなポータルなので情報掲載による広告効果も大きいが、中立性を考えると情報提供はできないと判断した」と述べた。ヤフーは情報提供の継続を求めてFRKと交渉を続けているが、難航している。

ヤフーがどんな説明をして情報提供継続を求めて交渉しているのかが気になるところですが、「不動産売買プラットフォーム」のお客に、他業者もソニー不動産と同じようにアプローチできるようにしない限り、「中立性」への疑義は消えないでしょうね。FRKが情報提供継続に応じないのは、それに見合う説明は出てきていないからだと思われます。意外と怒ってんのか、警戒しているのか、とにかく納得できねーよってことですよね。

そもそも、一民間企業であるポータルに、「中立性」を求められるのかという問題はあるでしょうし、そういった問題は不動産情報に関する取扱いに限らず色々の場面で問題になることだと思います。これに関して述べると話が脱線しまくりそうなのでここでは置いておくとして、現状では結局のところ、サービスを利用してきたお客が、特定のお客との不公平な取り扱いに腹を立てて利用を取りやめるという話になっている感じですね。

 

3. ソニー不動産とヤフーの提携への期待感も意外とあるようですが…

以前の記事を書いた7月に、ちょうど業者さんたちとの飲み会があって、この話題(ソニー不動産とヤフーの提携)が出ました。比較的若い業者さんたちだったのですが、圧倒的に「期待」の声が大きかったのが意外でした。何がしかの閉塞感を感じているのか、自分たちへの直接の恩恵はなくても「新しい試み」らしいものを歓迎するというムードでしたね。

私自身、他業界からこの業界にやってきた人間ですし、IT関連企業がこの業界にインパクトを与えていくこと自体は良いことだと思います。が、これは違う気がしますね。IT技術を活用した新しいトライではなく、単に「普通」考慮するだろうということを自社利益のために無視するというだけなのでは?間口を「個人間」にすることで「新しさ」を強調し、また既存仲介業者とのバッティングを形式的に回避しながら、実質的にはポータルパワーのコア部分をポータル自身のために使おうという話に見えます。

「期待」なんかとは程遠い感想を持っていたので、話が合いませんでした。

ポータルパワーを、ポータル自身が自社に都合よく使いたくなるという誘惑は当然生じるのでしょうけれど、これを突き進めていくとポータルの存在価値への疑念を拡大していく気もします。

余談ですが、Yahoo!JAPANはGoogleの検索アルゴリズムを利用しているそうで、同じキーワードだと検索結果はほぼ同じになります(パーソナライズド検索が効いていないことが前提)。しかし、「○○駅 賃貸」で検索すると、ヤフーの方では検索トップに「○○駅周辺の賃貸物件情報(○○○○件) – Yahoo!不動産」 と出ます。賃料帯や間取りごとのリンクも出ます。広告としてではなく検索1位としてです。Googleなどでは1ページ目には一切出てこないんですがね。まあ、ヤフーとグーグルで検索結果が完全同一だとは限りませんが、前からちょっと疑問には感じておりました…。

 

4. FRKに追随するのもありでは?

さて、私などからすると、FRKは当然の対応をしているように見えるのですが、どうでしょう。FRKは大手・中堅中心の業界団体で、ソニー不動産とのバッティングがキツくなっていきそうな部分も一因になっているのかも知れませんし、早めに芽を摘んでおきたいということかも知れません。しかし、中小業者にも多大な影響が生じる可能性は皆無ではないでしょう。

FRK経由の物件情報は数万件だそうですが、他ルートからヤフー不動産にあがるもの、会員個別にヤフーにあげている物件も当然あるでしょうから、実際どれくらいの数の物件がヤフーから消えるのかはわかりません。しかし、現時点で約13万件掲載というヤフー不動産にとって、万単位であれば多少はインパクトがある動きなのかも知れませんね。ヤフーにとって織り込み済みの数字なのか、誤算だったのか…。

個人的には、業界こぞってヤフーから物件情報を引きあげていく動きがあってもおかしくないんじゃないの?と思います。だってヤフー不動産の集客力は各業者が有料で掲載している物件情報によって支えられているわけですから(無料ならいいのかという話は別論として少なくとも有料ですよ)。例えば、スーモやらホームズやらアットホームやらが、特定の仲介業者とくっついて、あるいは自社自ら宅建業者となって、自分たちに媒介をどんどん流す仕組みを導入しても、みんな黙ってるんでしょうか。

 

不動産業界に限らず、ポータルや各種プラットホームを提供する企業の言いなりになるしかない世界(一部ではもうそなっているでしょうが)は誰も望んでいないと思うのですが、いかがでしょう。

 

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griffin

グリフィンです。不動産業もWordPressも関わるようになってまだわずか。それを差し引いてお読みください。コメントはお気軽にどうぞ。

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