新しくて古い「おうちダイレクト」のソニー不動産とヤフー

去る11月5日、ヤフーとソニー不動産は、「おうちダイレクト」という新サービスを開始しました。(2015.11.8追記あり)

By: Kabsik Park

 

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ヤフーとソニー不動産の「不動産流通革命プロジェクト」。その第一弾として「マンション流通革命、はじまる。」と称して、「おうちダイレクト」という新しいサービスがリリースされました。

プレスリリース : 新しい不動産売買プラットフォーム『おうちダイレクト』開始のお知らせ / プレスルーム – ヤフー株式会社
プロモーションサイト : Yahoo!不動産 ソニー不動産 不動産流通革命プロジェクト 「おうちダイレクト」

 

ちなみに、ヤフーとソニー不動産の提携に関連する過去記事はこちら。

ヤフーとソニー不動産の「不動産流通革命プロジェクト」は本当に革命なのか。
不動産流通経営協会(FRK)がヤフーへの不動産情報提供停止、他も追随すれば?

 

1. 「おうちダイレクト」の概要(主に売主視点で)

おうちダイレクトのサービス対象者は現在のところ、マンション所有の個人限定、また地域も今のところ限定されています(千代田区、中央区、港区、渋谷区、品川区、江東区の東京6区)。しかし、地域は順次拡大していくそうです。

ごく簡単にサービス概要を書くと、

(1) マンション所有者がオーナー登録(ヤフーIDでOK)
(2) 登録オーナーは「不動産価格推定エンジン」によって推定された価格を知ることができる。
(3) マンションを売りたいと思ったら、自らヤフー不動産に無料で売出投稿ができる。
(4) 売出価格はオーナー自身が決定。
(5) 購入希望者からの「買いたいリクエスト」等はマイページに反映される。
(6) 売主と購入希望者とがウエブ上で直接質問・回答ができる(匿名)。
(7) 物件見学にはソニー不動産のコーディネーターが同行。
(8) 仲介の手続はソニー不動産が行う。
(9) 仲介手数料は売主無料・買主有料。

といったところです。

 

2. 「おうちダイレクト」が新しくない点

 

(1) 普通の中古マンション売買仲介

過去記事で色々書いたので簡単に書きますが、このサービスは個人間売買をサポートするサービスではなく、ソニー不動産が仲介する売買だという点です。つまり、売出のきっかけや途中の買主とのやり取りに目新しいところはあるものの、その実質は仲介会社が介在して行われる普通の中古マンション売買と変わらないということです。

 

(2) 仲介手数料

仲介手数料が無料に関しても、一方当事者の手数料を無料にする会社は他にもあります。無料になる一方当事者がどちらなのかは会社やケースによって異なると思いますが。

 

(3) 仲介会社はソニー不動産のみ

ソニー不動産は買主から仲介手数料を受け取ることで収益を上げるので、「おうちダイレクト」で売り出された物件を購入する場合、仲介会社はソニー不動産しか選べません。明示はされていないのではっきりは言えませんが、他の仲介会社が当物件の売買に介入することは出来ないと思われます。

 

3. 「おうちダイレクト」が新しい点。

 

(1) 不動産価格推定エンジン

「不動産価格推定エンジン」はソニー不動産とソニーが開発した不動産価格推定システムで、機械学習を応用したものなのだそうです。これについては、去る10月8日にニュースリリースが出ており、ソニー不動産でも紹介されていました。

ニュースリリース : Sony Japan | ニュースリリース | 業界最高水準の精度を実現した「不動産価格推定エンジン」を開発
紹介サイト : 不動産価格推定エンジン | ソニー不動産株式会社

いわゆるビッグデータ分析とAIのアルゴリズムを利用したもののようなのですが、結構な精度(とはいえ結局実際の成約価格との比較なのですが)で推定価格が出るそうです。

不動産価格査定に関しては、既に色々なサービスがありますが、ヤフーIDさえあれば利用できるという点はハードルが低くて利用する人も多そうですね。

また、購入希望者も不動産価格推定エンジンによるシステム推定価格を知ることができるそうです。

マンション購入検討者は、データベース化されたすべてのマンションについて、売り出し中の住戸がそのマンション内にない場合でも、購入検討中である旨の意思を表明(以下「買いたいリクエスト」)できます。買いたいリクエストをしておくと、そのマンションの住戸タイプごとのシステム推定価格を知ることができるほか、そのマンションの住戸が「おうちダイレクト」を通じて売り出された際に通知が届きます。

「おうちダイレクト」プレスリリースより

マンションの売却や購入をうっすらとでも考えたことのある人なら、価格は一番の関心事かもしれません。そういう点では、不動産価格の推定を自動化して利用のハードルを下げるというのは、ユーザーの囲い込みに大きく寄与する可能性はあると思います。

そもそも、「自分で売り出せる」ということに魅力を感じる人がどれくらいいるのかが良くわからず、また、「自分で価格を決められる」と言っても仲介会社を通じて売り出す場合も売出希望価格に耳を傾けない仲介会社はいないと思うので、どうなのかなあぐらいに思っていたのですが、売り出す前や購入に動き出す前の段階で囲い込む仕組みとしては、なかなかに期待が持てる気もします。

 

(2) 市場の反応がわかる点

オーナー登録すると、「買いたいリクエスト」の人数や希望条件の詳細を、マイページでダイレクトに知ることができる、というのは良いですね。

マンションに住んでいるとわかる方も多いと思うのですが、「このマンションを買いたがっている人がいます」という不動産仲介会社のチラシが入っていることがよくあります。まあ、実際にそういう顧客を抱えている場合もないことはないのでしょうが、いなくてもこういったチラシは入ります。

また、売却の仲介を依頼した会社から、広告に対する反応の報告がありますが、それが本当なのかどうか売主には確かめる術はあまりありません。例えば、売却依頼を受けている仲介会社Aに、購入希望の顧客を抱えた仲介会社Bから問い合わせをしても、両手仲介を狙うAが「商談中」などと称して商談に応じてくれないいわゆる「囲い込み」をされる場合があります。こういう場合はAの利益のために早期売却の機会を失う可能性もあるわけで、仲介会社の思惑によって市場の反応が売主に正しく伝わらず、売主の利益に反する自体が生じることになりかねない場合もあります。

そういう意味では、今まで仲介会社が「正直に」伝えてくれない限りわからなかった情報をダイレクトに把握できる仕組みというのは、売主保護の観点からは良いのではないかと思います。

まあ、「買いたいリクエスト」がどれくらいライトなものなのか、という点は気になりますが、それでも、市場の反応の目安には多少なりともなると思われ、こういったものが仲介会社の介在なしに把握できるというのは、売主にとってメリットだと思います。

欲を言えば、他のマンションへの反応と比較できると良いだろうなあ、とは思いますが。

 

(3) 直接やりとりできる点

匿名で、質問・回答のやりとりが出来る、というのはメリットでもありデメリットでもある気はします。この点も含め、売出も購入希望も、どれくらいの本気度を担保できるか、という点が重要ではないかと思います。仲介会社が介在していれば少なくともその辺のフィルターは通っているわけですものね(たぶん)。

 

4. 「売出価格を自由に設定」と「システム推定価格」

さて、マンションオーナーが自由に価格を設定して売り出せる、というのが「おうちダイレクト」のメリットのひとつ(というか肝)なわけですが、売主からすると、妥当な市場価格で処分したいという考えだけではなく、残債があるので高く売りたい、であるとか、早く処分したいので安くてもいい、とか、色々な希望があると思います。

そこで、例えば「システム推定価格」が4,000万円のマンションを4,500万円で売り出した場合、「500万円も高いだろ!」と当然なると思います。まあ、「システム推定価格」がなくても「高いだろ!」とはなるでしょうが(笑)。

不動産に2つと同じものはないので、機械的に算出した価格がすべてということはない、という理解は相互にあるものと思いたいところですが、それでも従来よりも「システム推定価格」が作るイメージは強いものになりそうな気もします。

いくら価格設定が自由でも売れなきゃ意味がないわけで、この「システム推定価格」は買主側にとって有効なツールにはなるかも知れないものの、売主には足枷になる可能性もなくはないのではないかなあ、と思います。

まあ、「市場価格としてはこの辺が妥当なのは双方わかっているけど、双方合意でこの値段でハッピーだからいいじゃん」となるのが理想と言えば理想ではありますが、そういう取引は稀になっていくのかも知れませんね。良い悪いの問題ではありませんが。

 

5. ソニー不動産しか選べないところがね。

「おうちダイレクト」掲載の物件は、ソニー不動産の仲介でしか購入できないものと思われます(予想)。

*1:「おうちダイレクト」の利用者は、不動産の所有者・購入検討者ともに、個人に限ります。

「おうちダイレクト」プレスリリースより

窓口は「おうちダイレクト」一本、仲介会社はソニー不動産のみ、ということだと思います。「そういうことです」と言えばそれまでですし、ヤフー不動産という強力媒体を使うんだから告知力も問題なしで不都合もないということかも知れませんが、色々な窓口を通じて物件告知したいなら、「おうちダイレクト」に掲載しつつも、他の仲介会社にも一般媒介とかで売却依頼しておけば良いですね。と思ったら、それはダメでした。

・以下のいずれかの場合、売り出しは行えません。
– 宅地建物取引業者の所有
– おうちダイレクト以外のサービスで売却活動を行っている
– 実際に売却する意思がない
– 購入希望者による物件の見学を受け入れられない

おうちダイレクト使い方ガイド

たぶん、売主がソニー不動産と締結する媒介契約も専属専任媒介とかなんでしょうね。  → (2015.11.8訂正)どうも一般媒介のようです(※)。

・初回見学時までに、ソニー不動産と媒介契約を締結していただきます。

おうちダイレクト使い方ガイド

まあ、そういうことだそうです。

———————————————————————

個人的には情報の透明性が高まることは良いことだと思われ、そういう意味では市場の反応を売主がダイレクトに把握できるこのサービスには新しい風も感じます。こういうのがきっかけで、普通の仲介会社が売却依頼を受けた場合も、市場の反応をリアルタイムで売主が把握できるようになったら面白いかも、と思います。

ただ、「個人間売買」の匂いをただよわせて、「ソニー不動産による仲介売買」であることを薄くしてしまっているところは、なんだかなあと思わなくもありません。まあ、セールストークなんでしょうがありませんが。

ソニー不動産だけでやる分には「ほほう」という反応になると思うんですが、ヤフー不動産でやるから「これまで貯めたポータルパワーをソニー不動産とヤフーだけのために使っちゃうぞ。そんでもって売り物件を囲い込んじゃうぞ。」って思ってるんじゃね?という邪推を呼んでしまうと思うのですが。

仮に、ソニー不動産とヤフーが「囲い込みをする既存大手のポジション」にどうやって辿り着くか、という発想だとすれば、ビジネスとしては妙案だとしても、それはやっぱり「古い」発想だと思えなくもありません(ただ、情報の透明性を高め、旧来の「囲い込み」の弊害をなくした「囲い込み」になるなら、消費者利益には反しないのかも知れませんね。理屈の上ではそうなる可能性もあると思います。)。

しかし、そもそもの話をすれば、もしこの「おうちダイレクト」がブレイクするようなことがあれば、それは消費者の不動産会社に対する根強い不信感の表れだと言える一面もあるのかも知れませんね。かといって、救世主が目の前に現れたわけでもないようなのですが…。

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まあ、「革命」は始まったばかりですし、サービスも今後ブラッシュアップされていくことでしょう。期待感も含めながら関心を持ち続けたいと思います。

(2015.11.8追記)
※ 仮に一般媒介契約だとするとレインズ登録の義務はありません。一方で利用規約で他での売却活動は禁止されています。そうすると、実質的な専属専任媒介なのに、媒介業者がレインズ登録義務・報告義務だけを免れる契約に思えますね。

尚、興味深い記事などあったのでリンクをはっておきます。こっちの方がわかりやすいです(笑)。

ヤフー×ソニー不動産「おうちダイレクト」一般媒介と利用者規約で物件の囲い込み体制か | FDJオンライン

新たな合法的囲い込みでしょ?「おうちダイレクト」 | 府中の不動産屋 わいわいアットホーム社長日記ブログ

ヤフーとソニー不動産が仕掛けるマンション流通革命とは? | マンション購入を真剣に考えるブログ

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griffin

グリフィンです。不動産業もWordPressも関わるようになってまだわずか。それを差し引いてお読みください。コメントはお気軽にどうぞ。

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